相米慎二監督(1948~2001)
繊細な巨匠、ロングテイクの名手
相米慎二監督(1948~2001)
繊細な巨匠、ロングテイクの名手

相米慎二は、青春と成長をテーマに真摯に取り組む日本の映画監督の中でも、とりわけ詩人的だとみなされています。映像美あふれる彼の作品の特徴は、長回しのカメラショットであり、それによって子どもや若者が人生で経験する不安定さを繊細に描き出します。一方では自らの能力を証明しなければいけない、一方では大人の世界の不完全さを発見してゆく、そうした彼らの青春という不定形が描かれているのです。
1980年代、日本の映画業界が伝統的な撮影所システムの崩壊を受けて新たな方向性を模索する中、相米の名は注目を集めるようになりました。この移行期において、彼はインディペンデントな監督活動の時代を切り拓く先駆者としての役割を果たしました。彼の作品は日本国内で高く評価され、数々の賞を受賞し、濱口竜介、是枝裕和、黒沢清といった著名な監督たちに影響を与えています。日本国外では長く一定の知名度に留まっていた彼の名は、特に近年になって批評家や観客の間で再発見され高く評価されています。2023年にヴェネツィア国際映画祭にて『お引越し』が「ヴェネツィア・クラシックス最優秀修復映画賞」を受賞したこともその契機となりました。
相米は1980年から2001年までに13本の長編映画を監督しており、そのうちデジタル修復版を含む全10本を今回の特集で紹介します。加えて、相米が助監督を務めた長谷川和彦監督による『太陽を盗んだ男』も併映します。

相米慎二は1948年1月13日、岩手県盛岡市に生まれました。法学部中退後、1972年より日活で長谷川和彦や寺山修司らの助監督を務めました。1975年から1979年までフリーとなり、1980年の『翔んだカップル』で監督デビューを果たしました。
1982年には若手映画作家たちと共に製作会社「ディレクターズ・カンパニー」を設立、そこで代表作のひとつである青春映画『台風クラブ』を制作しました。彼の作品は、興行的にも成功したヤクザ女子高生映画『セーラー服と機関銃』から、心揺さぶる青春ドラマ『お引越し』、そして悲愁漂うロードムービー『風花』に至るまで、多岐にわたります。2001年9月9日、相米慎二は肺がんのため、53歳という若さで亡くなりました。
本特集の一部の作品は、ベルリン、ハンブルク、ミュンヘンでも上映予定です。
また、2025年9月18日には、オラフ・メラーによる講演が予定されています。
協賛:JTI
日時
2025年09月08日 ~ 2025年10月30日
場所
Japanisches Kulturinstitut
Universitätsstraße 98
50674 Köln
料金
Eintritt frei
協賛
