オンライン講演会 「音楽は人をつくる 宮沢賢治・高畑勲・ベートーヴェン」
講師 ラインハルト・ツェルナー(ボン大学日韓専攻教授)
オンライン講演会 「音楽は人をつくる 宮沢賢治・高畑勲・ベートーヴェン」
講師 ラインハルト・ツェルナー(ボン大学日韓専攻教授)

宮沢賢治は、膨大な数のレコードをコレクションしていただけではなく、自らも音楽を作り、自分の生徒たちにも音楽と関わることを勧めていました。賢治の文章では多くの箇所で、音楽が重要な役割を担っています。彼の文学の言葉は音楽の影響を受けており、物語の中にはたくさんの歌や演奏する人々が登場します。青年チェリスト・ゴーシュを描いた物語では、人間形成における音楽の役割が描かれていますが、特徴的なのは賢治が、人間形成というものが単に他の人間との関係にかかわるのみならず、つらい思いをする生き物たち、つらく苦しい思いを共有するあらゆる生き物たちとも密接にかかわっていると描いていることです。人間であるということは、他者の苦しみを共有することであり、音楽がそれを救済できるのです。こうした考え方において、賢治は、彼がよく知るベートーヴェンの音楽理念に非常に近い地点にいます。高畑勲という偉大なアニメ監督は、ゴーシュの物語を、高みにおいて分かりあえる天才同士でなければできないようなやり方で、(彼の作品としてはかなり短めの)アニメ作品に作りあげました。ベートーヴェンの『田園交響曲』に彩られたアニメ作品の「セロ弾きのゴーシュ」は、アニメに登場する者たち、そしてそれを見る者たちのすべてを、そうした意味での「人間になるプロセス」に参画させてくれるのです。宮沢賢治の文章、高畑勲の映像、そしてベートーヴェンの音楽は、それぞれが独自に世界を明るく照らし出してくれますが、それらが一体になるとき、私たちをより遙かなる高みへと押しあげてくれるでしょう。
(講演はドイツ語のみです)
講演はZoom-Webinarで行います。
日時
2022年03月02日 18:00
場所
オンライン