茶の湯とはなにか
茶の湯とはなにか

神津朝夫(Kozu Asao)
粉末の緑茶(抹茶)に湯を注ぎ攪拌して飲む中国の古い喫茶法が、日本に伝わって300年を経て独特の 茶の湯に発展した。 その稽古・修行が茶道となり、広間で菓子一つで薄茶一服を飲む現代の茶会は、 茶道の発表会といえる。本来の茶の湯は、狭い茶室に数人が集まり、和食(懐石料理)を食べ日本酒 を飲み、独自の栽培技術による色鮮やかな緑茶を飲み、その陶器や漆 器などの道具を鑑賞して楽しむ 宴会である。茶の湯は日本の技術、芸術と文化を集約した小宇宙といえる。一方、日本の芸術論は詩 歌論として展開されてきたが、本来は不幸な「さびしさ」「わびしさ」に人生の真実を見いだして 詩 興とすることが、戦乱と災害の多かった12世紀末以後、中世の和歌や能楽で重視された。高価な茶道 具をもてず、立派な座敷を持てず、客に出す料理の品数も少ない貧乏な茶人は「わび」と呼ばれた。し かし、そ の粗末な茶会・茶人こそが「さび」の美意識を体現するものとして評価され、共感されるよ うになった。豪商茶人たちも「わ び」茶をするようになり、実際は貧困ではなくとも、禅によって悟 ることで自分たちも世俗性と物欲を捨てた「わび」と同じ 精神的境地になると考えた。そして「わ び」の美意識は禅仏教に基づくものだと意識するようになった。そのため、これまで「わび」は禅の 美学と説明されることが多かったが、華麗さを好む中国仏教には「わび」の美意識はな く、実は日本 の伝統的な美意識に基づくものであった。そうした近年の新しい茶の湯研究の展開を紹介したい。
日時
2025年06月10日 19:00
場所
Japanisches Kulturinstitut
Universitätsstraße 98
50674 Köln
料金
Eintritt frei